「奇跡」のゲームの話をしたい。『Hotline Miami』レビュー
「奇跡」
「奇跡」。それは時に、作品を評するのに用いられる。
例えば映画であれば、俳優と監督、音楽に脚本といった様々な要素が、絶妙に噛み合ったときに。
ロックであれば、歌唱と楽器の音色とテンポであろうか、それらが素晴らしい音楽を紡いだ時に。
「奇跡」が作品を評する際に用いるべき単語であるかは判断しかねる問題であるが、ともかく、正しく「奇跡」の様相を呈した作品というのは、やはり存在すると言っていい。
クリエイターの実力を最大限に、いや、それ以上にまで発揮した作品。
『Hotline Miami』は、間違いなくその類であろう。
概要
インディーゲームとしては異例の大ヒットを記録し、「Ruiner」や「Apeout」等の所謂Miamiフォロワーを数多く生む一大ブームを巻き起こした。そして今なお、その魅力は人々を惹きつけて止まない。
単純に言えば、このゲーム、「面白い」のだ。
しかしこのMiami、どこをとっても「面白い」。BGM一つとっても素晴らしい。
その「面白さ」を、私の独断と偏見を以って分解し、紹介したい。
R TO RESTART!
Miamは、俗に言う「死にゲー」である。
何度も失敗を繰り返しては、成功に辿り着くまで試行する。
いわばトライ&エラーを楽しむゲームだ。
スピーディーなゲームプレイも魅力で、敵は全て一撃で死に至る為、
スタイリッシュに殺戮を楽しむことが出来る。
それと同時に、Miamiはシビアなゲームでもある。
一度でも敵の放つ銃弾や近接攻撃を受ければ、プレイヤーは即死する。
プレイヤーキャラの強化等の要素は無く、ひたすらにストイックだ。
そんなMiamiを優秀な「死にゲー」たらしめるのは、Rキーでの即リスタートシステムであろう。
このゲームに残機やロード時間といった煩わしい要素など一切ない。死ねば、Rキーを押せば即座にフロアの最初からリスタートできる。
1フロア自体もそこまで大きくないので、ストレスフリーに殺戮を楽しめるという訳である。
また、難易度曲線も非常によくできている。
初めはごく簡単なステージであるが、段階的に敵の数と一フロアのサイズは増加する。プレイしながらテクニックを覚え、上達を実感できる作りになっているというわけだ。
Miamiにはスコアの概念も存在し、敵に馬乗りになってトドメを刺せばハイスコア、使う武器に応じてさらに加点といった悪趣味なスコアシステムが搭載されている。
さらにコンボで点数が倍増するため、ハイスコアの為に繰り返し楽しめること請け合いだ。
そしてゲームプレイをさらに盛り上げるのが、サイケなBGM達だ。
シンスウェーブと呼ばれるジャンルのものであり、多用されるシンセサイザーの音色にはどこか80年代らしい懐かしさと高揚を覚える。
"Miami Disco" - Perturbator (Hotline Miami OST)
特にMiami Discoは、どこかノスタルジックな物悲しさも漂う名曲だ。これらがゲームのために書き下ろされたのでなく、既存の楽曲を使ったというのだから驚きである。
人を傷つけるのは好きか?
あらすじはこうだ。
夢から覚めると自宅のアパートの留守番電話に伝言が入っており、それに従って荷物を開くと、そこには夢で見たニワトリのマスクが入っていた。
Jacketは留守番電話が指示した場所へと赴き、殺戮を繰り返す・・・
特筆すべきはその演出で、サイケなBGMや極彩色のドット、そして70年代ポップ・カルチャーに影響された独特の雰囲気がプレイヤーをMiamiの世界へと誘う。
ストーリーの考察に興じるのも、また一興であろう。