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森の賢者になりたい

鉄と血と少女の臓物。現代のDOOMライク・シューター『The Citadel』

今でこそ対戦ツールの代名詞的な存在となったファーストパーソン・シューター。その歴史は長く、ジャンルとしての産声を挙げたのはおよそ30年も前まで遡る。

時は1992年、id softwareは迷路ゲームのノウハウを活かした史上初のFPS『Wolfenstein 3D』を発売、その翌年には矢継ぎ早に同社の代表作となる『DOOM』をリリースした。その二作に共通するのは斬新さ、そして過剰なまでの暴力性であり、それらは当時のゲーム業界に大きな衝撃を以って迎えられることとなる。

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1990年代初頭と言えばちょうどスーパーファミコンが発売されて間もない時代であり、フロッピーディスクが現役であった時代でもある。そんな中発売された『DOOM』が与えた衝撃の大きさは想像に難くない。ポリゴンを用いない疑似的な3D表現、のちに物議を醸すこととなる残虐なゴア表現もさることながら、当時は銃で敵を撃つという表現までもが新しかった。無論ゲーマー達はその魅力に圧倒され、多くの狂信的なファンを獲得するに至った。

このようなエポックメイキングには多くのフォロワーが付き物だ。かの『ダイ・ハード』が記録的なヒットを収めてからというもの、似たような映画がひっきり無しに公開されたのと同じように、『DOOM』もまた多くのフォロワーを生んだ。それらは"DOOMライク"と定義され、数多くの名作と迷作が入り混じる中で、FPSというジャンルはさらに洗練されていくのだった。

『The Citadel』はそんなFPS黎明期を思い起こさせるオールドスクールFPSだ。プレイヤーは戦う修道女となり、巨大要塞の奥深くに眠る偽りの神を打倒すべく、熾烈な戦いに身を投じることとなる。

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まず目を引くのがそのハイセンスな世界観。キャラクターデザインにはアニメチックな美少女像とバイオメカニカルなモチーフが混在し、加えて宗教的なテーマも影響している。各ステージのボスにはそれぞれ七つの大罪があてがわれ、その造形は美しくも異様である。

DOOMライクのお約束であるゴア表現は過剰なまでにこだわり抜かれており、炎上して死に至る過程までもが細分化され作りこまれている。身体パーツは細かくパーツ分けされ、これでもかというほどの身体欠損表現を見せてくれる。苦悶の表情を浮かべた少女の頭部と臓物が入り乱れる凄惨な光景もまた、本作ならではのエッセンスと言える。

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しかしながら、本作のセールスポイントはその秀逸なビジュアルのみではない。次のエリアに進む為カードキーを探したり敵と戦闘したりする古典的なスタイルを採用しつつ、一方で現代的なFPSの要素も数多く導入されている。

DOOM』とは異なりXY軸の照準移動が出来、現代のFPSと同様ADSも可能で、ダッシュと二段ジャンプによってよりスピーディなゲームプレイが提供される。また、銃弾は即着弾でなくしっかりと放物線を描いて飛翔する。リロードの概念も存在し、弾薬を撃ち尽くしてからのリロードに至っては、チャンバー(薬室)に初弾を装填するまたはコッキングレバーを引くといったアニメーションが追加されるという芸の細かさだ。オプションとして武器のジャム(給弾不良)と左右へのリーンの有無も選択でき、さらに異なるゲームプレイを味わえる。f:id:F4LFER:20200817204719p:plainミニマップの存在も、本作を凡庸な90年代風シューターに留まらせない重要なファクターであるといえるだろう。敵の位置は常にマップに表示されるため、どの武器を用いるかといった戦略を立てながら行動する楽しみもある。立体的かつ各部屋が扉で隔てられたマップの構造と相まって、走っては銃を撃つラン&ガンスタイル以外にも、慎重に索敵しつつ各個撃破を狙うようなプレイングをも可能だ。また、画面に表示される三本のバーはそれぞれ体力、スタミナ、満腹度を示しており、スタミナは近接攻撃やダッシュで、満腹度は時間経過によって減少する。満腹度が減少すると体力・スタミナの上限値が低下するので、あまり時間をかけすぎてもいけない。

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前述したゴア表現と同様、炎や煙のようなパーティクル表現がリッチであるのもまた現代のFPSの特権であろう。2.5Dながらチープさを感じさせない味のあるグラフィックは、独特の世界観と相まって『The Citadel』の世界へとプレイヤーを引きずりこむ。

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武器種、敵種、ステージ数共にボリュームも十分だ。独特なデザインで強烈なキャラクター性を持つ銃器にはそれぞれセカンダリファイアが搭載されており、ライフルグレネードの如くマグナムから榴弾を発射したり、敵を焼き尽くす火炎放射やレーザービームを放つこともできる。さらに、武器類はショップでパーツを購入すれば装弾数の増加やスコープのズーム倍率の強化などの恩恵も受けられる。

ステージは6章に分けられ全部で30ステージ、時間にしておよそ4~5時間ほどで、周回にも適した程よいボリュームといえる。難易度もイージー、ノーマル、ハードと3つに分けられているので、一度クリアした後はより高い難易度に挑戦してみるのも良いだろう。

『The Citadel』はSteamにて1500円で販売中。ここはひとつ原点に立ち返って、オールドスクールな一人用FPSをプレイしてみるのはいかがだろうか。

https://store.steampowered.com/app/1378290/The_Citadel/