毎日ウホウホ

森の賢者になりたい

ヒロハタ・マーキュリーの数奇な運命と、ミュージアムが果たす役割

はじめに ミュージアム。日本語で博物館と呼ばれるそれは、15世紀ヨーロッパの「驚異の部屋」に端を発する。当初は諸侯や有力貴族が世界各国から蒐集した珍品を客へと披露する場であり、個人的なコレクションに過ぎなかった。しかし18世紀になると、やがてそ…

【NFSHP】 迷走期の佳作

長寿コンテンツには迷走がつきものなんだろう。刑事ドラマ『相棒』はコメディタッチのバディモノから社会派サスペンスに舵を切ったりするし、夏の風物詩であるガリガリくんなんてもはやコーンポタージュだのナポリタンだの、ホントに美味くなると思って作っ…

「ぼざろ」の複合的な聖地巡礼について

1.はじめに 講義内で、我々は様々なかたちでの「聖地巡礼」を学んだ。あのアビー・ロードをはじめとした、イギリスのビートルズゆかりの地を巡る「マジカルミステリーツアー」はまさしく音楽の聖地巡礼であり、アニメの聖地巡礼であれば、関西学院大学が位…

アウトサイダーアートとして捉える「族車」

1.はじめに 日本の自動車文化は、海外ではもはや芸術のような扱いで受容されているといってよい。たとえば煌びやかな装飾が施されたトラックである「デコトラ」は、高級ブランド、グッチの広告ビジュアルで大胆にフィーチャーされ、国を挙げた祭典、パラリ…

衣食住足りておいて

衣食住足りておいて、"何者かになりたい"なんて贅沢な話だ。食うや住むに困るのが当たり前の時代なんてほんの数百年前だし、今この瞬間も現在進行形でどこかで苦しんでいるやつがいる。だのに僕はこのところずっと、アイデンティティとかそういう類のものに…

"暴れる力"で夏を乗り切れ!今見たい暴力映画2選

まだ7月初めだというのに暴力的な日差しが照りつける2022年、みなさんいかがお過ごしでしょうか。 僕はクソ暑い毎日にクソ辟易しつつもクソ元気です。 なぜなら暴力映画を摂取しているから。 ──────𝑽𝒊𝒐𝒍𝒆𝒏𝒄𝒆、暴力。 暴力は人類とは切っても切れない関係にあ…

『恋は永遠』MVと『遠近法を使ってヌードを描くアーティスト』

www.youtube.com このMVはストリップ劇場である川崎ロック座を舞台とし、美術史で長年描かれてきたそれと同様に、女性を見られる側、男性を見る側として描き切っている。しかし、その描き方には典型的な美術絵画との差異が認められる。 中世美術において男性…

"自由"に基づくゲーム批評と、その一貫性を保つ難しさ

『グランド・オダリスク』という絵画がある。この新古典主義を代表する名画は、1814年、ドミニク・アングルの手によって描かれた。しかし発表された当初、その評価は芳しいものでなく、彼の他の作品と共に1820年代半ばまで批判され続けることとなった。1819…

鉄と血と少女の臓物。現代のDOOMライク・シューター『The Citadel』

今でこそ対戦ツールの代名詞的な存在となったファーストパーソン・シューター。その歴史は長く、ジャンルとしての産声を挙げたのはおよそ30年も前まで遡る。 時は1992年、id softwareは迷路ゲームのノウハウを活かした史上初のFPS『Wolfenstein 3D』を発売、…

物書きは"ツンデレ"である

物書きはツンデレである。それもかなりステレオタイプなツンデレである。「べ、別にあんたの為にやったわけじゃないんだからね!」なんてベタなセリフが、きっとよく似合う。文章には堤防がある文章、とりわけ専門的な要素を多分に含むものは、自ずと難しく…

「奇跡」のゲームの話をしたい。『Hotline Miami』レビュー

「奇跡」 「奇跡」。それは時に、作品を評するのに用いられる。 例えば映画であれば、俳優と監督、音楽に脚本といった様々な要素が、絶妙に噛み合ったときに。ロックであれば、歌唱と楽器の音色とテンポであろうか、それらが素晴らしい音楽を紡いだ時に。 「…

ゲームにおける「自由度」とは一体何か?オープンワールドと関連付けて考える。

「自由度」って、何? 最近、インターネット上のゲーム界隈でよく耳にする単語がある。「自由度」だ。ある時は、ゲームをレビューするにあたっての評価の材料として。ある時は、理想のゲームとはどのようなものか?といった議論の中で。しかし、この言葉の定…